ボタンボックスの役割
ボタンボックスはシムレーシングの操作環境を拡張する周辺機器
ボタンボックスは、シムレーシングにおける操作入力を拡張する周辺機器である。実車のダッシュボードを模したスイッチパネルで、ステアリングホイールのボタンだけでは賄いきれない操作を担当する。
iRacingやAssetto Corsaなど、多くの操作項目を持つ本格的なシミュレーターでは、ボタンボックスの導入により操作性が向上する。イグニッション、ライト類、ワイパー、トラクションコントロール調整、ブレーキバイアス調整——これらの操作を専用のスイッチに割り当てることで、ステアリングから手を離すことなく各種設定が可能となる。
ステアリングボタンの制約
多くのシム用ステアリングには十数個のボタンが搭載されているが、本格的なシミュレーターでは操作項目が多岐にわたる。
代表的な操作項目としては、ライト類(ヘッドライト、フォグ、ハザード)、ワイパー、イグニッション、スターター、トラクションコントロール調整、ABSレベル調整、ブレーキバイアス調整、燃料マップ切り替え、ピットリミッター、無線通信などがある。これらすべてをステアリングのボタンに割り当てると、どのボタンがどの機能に対応するか把握しづらくなる傾向がある。
ボタンボックスは、トグルスイッチやロータリーエンコーダーといった形状の異なる入力デバイスを組み合わせることで、視覚と触覚による操作内容の識別を可能にする。
入力デバイスの種類
トグルスイッチ、ロータリーエンコーダーなど様々な入力デバイス
ボタンボックスに使用される主な入力デバイスには、以下のような種類がある。
プッシュボタンは、押すと反応する最も基本的な入力デバイスである。イグニッション、スターター、ピットリクエストなどの用途に適している。
トグルスイッチは、ON/OFFを切り替えるスイッチで、位置によって状態が視認できる。ヘッドライト、ワイパー、ファンなどの切り替えに使用される。
ロータリースイッチは、回転させて複数の状態を選択するスイッチである。燃料マップやエンジンモードの切り替えに適している。
ロータリーエンコーダーは、無限に回転し左右の入力を発生させるデバイスで、TC調整、ABSレベル、ブレーキバイアスなど段階的な調整に使用される。
キーボックスは、鍵を差し込んで回す実車のイグニッションを模したデバイスで、リアリティを重視する場合に選択される。
市販ボタンボックスの比較
市販製品は価格帯や機能が多様
市販されているボタンボックスには、メーカー純正品から汎用製品まで複数の選択肢がある。
Fanatec ClubSport Button Module Enduranceは、Fanatec製ステアリングに直接装着できる純正オプションである。ロータリーエンコーダー2基、トグルスイッチ1基、プッシュボタン12個を備え、価格は約3万円。Fanatecエコシステムとの統合性が高いが、Fanatec製品専用となる。
SIM Instruments SI-1は、本格的なスタンドアロンボタンボックスで、ロータリーエンコーダー4基、トグルスイッチ4基、プッシュボタン8個を備える。価格は約5万円。高い質感と豊富な入力数が特徴だが、価格帯は高めである。
汎用USBボタンボックス(Amazon等で入手可能)は、ロータリーエンコーダー2-4基、プッシュボタン8-12個程度を備え、価格は約1-2万円。安価で入手しやすいが、品質にばらつきがある場合がある。
DIYボタンボックスの構成
Arduino Pro Microと各種スイッチで自作可能
ボタンボックスは自作も可能である。電子工作の経験がなくても、基本的な部品と配線で製作できる。
必要な部品と価格目安
| 部品 | 用途 | 価格目安 |
|---|---|---|
| Arduino Pro Micro | コントローラー | 約1,000円 |
| プッシュボタン | 各種操作 | 約100円/個 |
| トグルスイッチ | ON/OFF操作 | 約200円/個 |
| ロータリーエンコーダー | 回転操作 | 約300円/個 |
| ケース | 収納 | 約1,000円 |
| 配線材料 | 接続 | 約500円 |
合計で約5,000-10,000円程度となる。
基本的な製作手順
製作手順は4段階に分けられる。まずArduino Pro Microをベースとして使用し、各スイッチ・ボタンを配線する。次にJoystick LibraryでUSBゲームコントローラーとして認識させ、最後にケースに収める。
プログラム例
#include <Joystick.h>
Joystick_ Joystick;
void setup() {
/ ボタンピンの設定
for (int i = 2; i <= 10; i++) {
pinMode(i, INPUT_PULLUP);
}
Joystick.begin();
}
void loop() {
/ 各ボタンの状態を読み取り
for (int i = 2; i <= 10; i++) {
Joystick.setButton(i-2, !digitalRead(i));
}
delay(10);
}
DIYの利点としては、コストを抑えられること(1万円以下で製作可能)、好みのレイアウトを実現できること、故障時に部品交換で対応できること、電子工作のスキルが身につくことが挙げられる。
配置とマウント方法
コックピットへの配置は操作性に直結する
ボタンボックスの配置は操作性に直結する。一般的な配置パターンは2つある。
ステアリング周辺への配置は、左右どちらかに設置し、手を伸ばせばすぐ届く位置によく使うスイッチを配置する方式である。コックピット左側への配置は、実車のセンターコンソールを模した配置で、イグニッションやスタータースイッチを置くことが多い。
マウント方法としては、両面テープ(手軽だが固定力が弱い)、ベルクロ(取り外し可能で便利)、ボルト固定(確実だがコックピット加工が必要)、専用マウント(一部メーカーが用意)といった選択肢がある。
ゲーム側の設定
ボタンボックスをゲームで使用するには、キーバインド(操作割り当て)の設定が必要となる。
一般的な設定手順は、ゲームの設定メニューを開き、コントロール/入力設定を選択、割り当てたい機能を選び、ボタンボックスのスイッチを操作して保存する流れである。
複数のUSBデバイス(ハンコン、ペダル、ボタンボックス)を接続している場合、ゲームによっては認識順序が問題になることがある。USBポートを固定し、毎回同じ順序で認識されるよう運用すると安定する。
ボタンボックスの用途と効果
ボタンボックスで操作環境が大幅に向上
ボタンボックスは、ステアリングボタンの不足を補完し、多くの操作を直感的に処理することを可能にする周辺機器である。トグルスイッチやキーボックスの使用により、実車に近い操作感が得られる。操作に迷うことが減り、レースへの集中度が向上する効果も期待できる。
市販品の購入とDIYによる自作のどちらを選択するかは、予算、カスタマイズ性、手間のバランスによって判断することになる。iRacingやrFactor 2など、多くの操作項目を持つ本格シミュレーターをプレイする場合に検討価値のある周辺機器である。
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