この本について
『人を動かす』(原題: How to Win Friends and Influence People)は、デール・カーネギーが1936年に発表した自己啓発書の古典。世界で1500万部以上、日本国内だけでも500万部を超えるベストセラーであり、あらゆるビジネス書・自己啓発書の原点とされる一冊だ。
著者のデール・カーネギーは1888年、米国ミズーリ州の農家に生まれた。雑誌記者、俳優、セールスパーソンなどさまざまな職業を経験した後、話し方講座の講師として成人教育に携わるようになる。その経験から得た「人間関係の原則」を体系化したのが本書である。
本書の特徴は、抽象的な理論ではなく、実際のビジネスシーンや日常生活から集めた具体的なエピソードを通じて原則を説明している点にある。リンカーン、ルーズベルト、ロックフェラーといった歴史上の人物から、カーネギー自身の受講生まで、豊富な事例が説得力を持って読者に語りかける。
こんな人におすすめ
- 部下や後輩の指導に悩んでいる管理職・リーダー - 人を批判せずに行動を変えさせる方法が学べる
- 営業・接客業で成果を上げたい人 - 相手に好印象を与え、信頼関係を築くテクニックが身につく
- 人間関係に苦手意識がある人 - 誰でも実践できるシンプルな原則で、対人スキルが向上する
- 新社会人・就活生 - 社会に出る前に押さえておきたいコミュニケーションの基本が学べる
- すべてのビジネスパーソン - 90年近く読み継がれる普遍的な人間関係の本質を理解できる
読みどころ
人を動かす3原則
本書の核心となる最初のパートでは、人を動かすための基本原則が示される。
- 批判も非難もしない - 人は批判されると防衛本能が働き、自分を正当化しようとする。批判は何も生み出さない。
- 率直で誠実な評価を与える - お世辞ではなく、相手の長所を見つけて心から称賛する。
- 強い欲求を起こさせる - 自分の望みではなく、相手が欲しいものを提示する。
特に印象的なのは、リンカーンの逸話だ。若き日のリンカーンは辛辣な批判で知られていたが、ある決闘騒ぎをきっかけに「人を批判しない」という原則を生涯守り続けたという。
人に好かれる6原則
第2部では、相手から好意を得るための具体的な方法が解説される。
- 誠実な関心を寄せる - 自分に興味を持ってくれる人に好意を抱くのは人間の本能
- 笑顔を忘れない - 笑顔は「あなたが好きです」というメッセージを伝える
- 名前を覚える - 人にとって自分の名前は最も心地よい響き
- 聞き手に回る - 話し上手より聞き上手が好かれる
- 相手の関心を見抜く - 相手の興味あることを話題にする
- 心から褒める - 相手の自尊心を満たす
これらは一見当たり前のように思えるが、日常生活で実践できている人は少ない。本書を読むと、自分がいかに「相手」ではなく「自分」を中心に行動していたかに気づかされる。
人を説得する12原則
第3部は、相手の考えを変えるための原則を扱う。ここでのポイントは「議論に勝っても、相手の心は動かない」という真理だ。
- 議論を避ける - 議論に勝っても相手の好意は得られない
- 誤りを指摘しない - 相手のメンツを潰せば、心は閉ざされる
- 自分の誤りを認める - 先に自分から非を認めれば、相手も態度を軟化させる
- イエスと言わせる - 小さなイエスを積み重ねることで、大きなイエスに導く
ビジネスの交渉やプレゼンテーションにそのまま応用できる原則ばかりだ。
実践への活用
本書を読んで終わりにしないために、以下のステップで実践することをおすすめする。
ステップ1:1つの原則を選んで1週間実践
30以上の原則が紹介されているが、一度にすべてを実践しようとすると挫折する。まずは「笑顔を忘れない」や「相手の名前を呼ぶ」など、取り組みやすいものを1つ選ぼう。
ステップ2:実践結果を記録する
カーネギー自身も推奨しているが、実践した結果を日記やメモに記録することで、成長を実感できる。相手の反応がどう変わったかを観察しよう。
ステップ3:定期的に読み返す
本書は一度読んで理解できる本ではない。経験を積むごとに新たな発見がある。年に1回は読み返すことで、原則が血肉になっていく。
版の選び方
『人を動かす』には複数の版が存在する。目的に応じて選ぼう。
| 版 | 価格(税込) | 特徴 |
|---|---|---|
| 新装版 | ¥1,650 | 標準版。初めて読む人におすすめ |
| 改訂新装版 | ¥1,760 | 2023年発売。現代に合わせた注釈・解説付き |
| 文庫版 | ¥880 | 持ち運びに便利。繰り返し読む人向け |
| 完全版 | ¥1,980 | 原書の完全翻訳。カットされた章を含む |
初めて読むなら「新装版」か「改訂新装版」がおすすめ。何度も読み返したいなら「文庫版」が手軽だ。
関連書籍
- 『道は開ける』D・カーネギー - 「人を動かす」と並ぶカーネギーの代表作。悩みの解消法を扱う
- 『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー - 人間関係の原則をさらに体系化した自己啓発の名著
- 『影響力の武器』ロバート・B・チャルディーニ - 心理学の観点から「人を動かす」メカニズムを解説
まとめ
『人を動かす』は、90年近く読み継がれてきた理由がある。本書で説かれる原則は、SNS時代の今でも—いや、対面コミュニケーションが減った今だからこそ—価値を増している。
「人を批判しない」「相手の立場に立つ」「心から褒める」。言葉にすれば当たり前のことばかりだが、実践し続けることは難しい。だからこそ、本書を手元に置いて繰り返し読み返す価値がある。
人間関係に悩むすべての人に、自信を持っておすすめできる一冊だ。