NanoKVM Pro レビュー:$89で4K対応IP-KVMの新時代
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NanoKVM Pro レビュー:$89で4K対応IP-KVMの新時代

Sipeed社のNanoKVM Proは、PiKVMの約1/3の価格で4K映像に対応した破格のIP-KVMデバイス。ホームラボユーザー向けにスペック・競合比較・セキュリティ懸念まで徹底解説。

2026/2/15更新
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Sipeed社のNanoKVM Proは、PiKVMの約1/3、TinyPilotの約1/4の価格で4K映像に対応した破格のIP-KVMデバイスだ。 ホームラボユーザーや小規模IT管理者にとって、BIOSレベルのリモートアクセスを$89から実現できる画期的な選択肢となっている。

2025年8月に発売された本製品は、初代NanoKVMで指摘されたセキュリティ懸念を大幅に改善し、完全オープンソース化を達成。ただし、成熟度ではPiKVMに一歩譲る面もあり、ミッションクリティカルな用途には注意が必要だ。


ハードウェア仕様:4K対応の小型パワーハウス

NanoKVM Proの心臓部にはAX630Cチップ(ARM Cortex-A53デュアルコア@1.2GHz)が搭載されている。1GB LPDDR4Xメモリと32GB eMMC内蔵ストレージの組み合わせは、競合製品のmicroSD依存設計と比較して高速かつ信頼性の高い動作を実現している。

映像処理能力は本製品最大の強みだ。入力は最大4K@30fps(非標準モードで4K@45fps)のキャプチャに対応し、HDMIループアウト端子で4K@60fps出力も可能。これにより、ローカルモニターを接続しながら同時にリモートアクセスできる実用的な構成が組める。

レイテンシは50〜100ms(2K時約60ms)で、従来モデルの100〜150msから大幅に改善された。

項目NanoKVM ProNanoKVM Cube(無印)
解像度4K@30fps1080p@60fps
レイテンシ50-100ms90-230ms
ネットワーク1Gbps + WiFi 6 + PoE100Mbps
ストレージ32GB eMMCmicroSD
サイズ65×65×28mm40×36×36mm

本体は65×65×28mmのアルミニウム筐体で、パッシブ冷却設計によりファンレス・無音動作を実現。消費電力は通常3〜4W、AI機能使用時でも最大7Wに抑えられている。


2つのバリエーション:ATX版とDesk版の違い

NanoKVM Proは用途に応じて2種類のモデルが用意されている。

NanoKVM-ATX

サーバーラック内設置向けで、ハーフハイト/フルハイトのPCIブラケットが付属。側面に0.96インチOLED(128×64ピクセル)を搭載し、IPアドレスやストリーム状態を確認できる。

ATX電源制御ボード(KVM-B)経由でマザーボードの9ピンヘッダーに接続し、リモートから電源オン/オフ、ハードリセットが可能だ。

NanoKVM-Desk

デスクトップ使用向けで、前面に1.47インチタッチスクリーン(320×172ピクセル)と無限回転ノブを搭載。タッチ操作でIPアドレス確認や設定変更ができ、ノブで音量調整やスクロール操作にも対応する。

アノダイズ加工マット仕上げの高級感ある外観が特徴だ。


リモートアクセス機能:BIOSからクラウドまで

本製品の核心的価値は、ハードウェアベースのリモートアクセスにある。ホストPCにソフトウェアをインストールすることなく、BIOS/UEFI設定変更、OS再インストール、ブートデバイス選択といった低レベル操作がブラウザから実行できる。

仮想メディア機能

WebUI経由でISOファイルをマウントし、リモートからOSインストールが可能。32GB eMMCの約21GBが仮想USBストレージとして利用でき、複数のISOファイルを保存・切り替えできる。Microsoft公式サイトからISOを直接ダウンロードする機能も搭載している。

ネットワーク接続

1Gbpsイーサネットを標準搭載し、オプションでWiFi 6と**PoE(Power over Ethernet)**に対応。

特筆すべきはTailscale VPNがプリインストールされている点で、ポート転送なしにセキュアなリモートアクセスを即座に構築できる。ZeroTier、WireGuard、Cloudflare Tunnelsにも対応し、Wake-on-LAN機能でシャットダウン中のPCもリモート起動可能だ。


価格と入手方法

NanoKVM Proの価格は構成により**$69〜$119**で推移している。

購入先ATX版Desk版備考
Sipeed公式$69〜-最安だがPayPal手数料・送料別
AliExpress$89〜$109$99〜$119Desk版は在庫切れ傾向
Amazon US$88〜-Prime配送対応
Amazon JP約8,000〜10,000円-配送6-7日程度

WiFi 6モジュールPoEモジュールは各数ドルの追加で選択可能。LED同期ストリップ(画面縁の雰囲気照明)は約$20で別売りされている。

なお、2026年1月時点で一部で€140程度まで上昇しているとの報告もあり、購入時は複数サイトで比較することを推奨する。


競合比較:PiKVM、TinyPilot、JetKVMとの違い

IP-KVM市場には複数の選択肢があるが、NanoKVM Proは価格対性能比で際立っている。

PiKVM V4 Plus($265〜$275)

完全オープンソースのゴールドスタンダードで、成熟したエコシステムとコミュニティを持つ。しかし解像度は1080p@60fps止まりで、NanoKVM Proの約3倍の価格だ。ATX配線がやや複雑で、技術的知識を要する点も初心者には障壁となる。

TinyPilot Voyager 3($399)

商用サポートが充実した「プラグ&プレイ」製品だが、1080p@24fpsと低いフレームレート、ATX制御非搭載(別売り)、そして最も高い価格がネックだ。エンタープライズ環境でのサポートを重視する場合は検討に値する。

JetKVM($69)

Kickstarterで$5.9M以上を調達した注目の競合で、30〜60msという最低レイテンシと無料クラウドサービスが強み。ただし1080p止まりでWiFi非対応、オーディオ伝送もできない。

NanoKVM Proの優位点

  • 唯一の4K対応
  • HDMIループアウト
  • WiFi 6 + PoE対応
  • PiKVMファームウェアとの互換性

ユーザー評価:高い満足度と残る課題

NAS Comparesのレビューでは4/5点の評価を獲得。実際のユーザーからは「50ドルでBIOSアクセスと仮想USBブートができるのは魔法のよう」「PiKVMより圧倒的に安い」といった称賛の声が多く聞かれる。

課題として指摘されている点

  • 入力遅延:特にTailscale経由で顕著。「Microsoft Remote Desktopよりはるかに遅い」との声も
  • HIDデバイスの不安定さ:キーボード/マウスが突然停止し再起動が必要になることがある
  • Desk版の回転ダイヤル:「作りが安っぽい」という評価も

セットアップは比較的簡単で、「ドキュメントを参照せずに接続できた」という声が多数。ただし、古いマザーボードでUSB電源が不足するケースや、S5状態でのUSB電源維持設定が必要な点は注意が必要だ。


セキュリティと信頼性

2025年2月、初代NanoKVM(Cube)に文書化されていないマイクが内蔵されていることが発覚し、セキュリティコミュニティで議論を呼んだ。

Sipeed社はこれをLicheeRV Nanoボードの再利用が原因と説明し、意図的なバックドアではないと弁明。その後、以下の対策を実施した。

  • ソースコードの完全オープンソース化(2025年2月以降)
  • SSHのデフォルト無効化
  • パスワード変更プロンプトの追加

NanoKVM Proではこのマイク問題は確認されていないが、中国製デバイスに対するプライバシー懸念を持つユーザーは一定数存在する。ミッションクリティカルな環境では、VLAN隔離やカスタムファームウェアの導入を検討すべきだろう。


開発状況と将来展望

GitHubリポジトリは約6,000スターを獲得し、活発なコミュニティが形成されている。ファームウェアは月1〜2回のペースで更新され、2026年1月16日にはv2.3.3がリリースされた。

2025年6月のv2.2.9ではセキュリティ脆弱性への重要な修正が行われており、更新が強く推奨される。

今後のロードマップ

  • H.265エンコード対応の完全実装
  • AIエージェント機能(自然言語でのPC操作)
  • 4K@45fps対応の安定化

Sipeed社はPR貢献者にデバイスを進呈するなど、コミュニティとの協働を重視する姿勢を見せている。


まとめ:誰に最適なデバイスか

NanoKVM Proは、$89という価格で4K対応IP-KVMを実現した画期的な製品だ。

おすすめできる人

  • ホームラボ愛好家
  • IPMIを持たないサーバーを管理する技術者
  • コスト重視でリモート管理ソリューションを求めるユーザー

他の選択肢を検討すべきケース

  • 完全な信頼性を求めるエンタープライズ環境 → PiKVM V4またはTinyPilot
  • 最低レイテンシを最優先 → JetKVM

NanoKVM Proはあくまで「価格対性能比の王者」であり、成熟度や長期サポートでは実績ある競合に一歩譲る点を理解した上での導入が賢明だ。


編集部の分析

コストパフォーマンス指数

各IP-KVM製品の「1ドルあたりの性能」を独自に算出した。

製品価格最大解像度レイテンシコスパ指数*
NanoKVM Pro$894K (8.3MP)50-100ms93.3
JetKVM$691080p (2.1MP)30-60ms30.4
PiKVM V4 Plus$2751080p (2.1MP)100-150ms7.6
TinyPilot Voyager 3$3991080p (2.1MP)100-200ms5.3

*コスパ指数 = 解像度(MP) ÷ 価格($) × 1000

NanoKVM Proのコスパ指数は93.3で、2位のJetKVM(30.4)の約3倍となっている。4K対応が指数を大きく押し上げている点に注目したい。

コミュニティ評価の傾向

Reddit r/homelab、r/selfhosted、および GitHub Issues を調査した結果、以下の傾向が確認された。

肯定的な評価が多いポイント:

  • 価格対性能比への満足
  • セットアップの容易さ(「箱から出して10分で動作」)
  • PiKVMファームウェアとの互換性
  • 4K対応による視認性の向上

課題として挙げられるポイント:

  • Tailscale経由での体感遅延
  • HIDデバイス(キーボード/マウス)の不安定さ
  • Desk版の回転ダイヤルの質感
  • 日本語ドキュメントの不足

購入チャネル別の実質コスト試算

日本からの購入を想定した場合の総コストを試算した(2026年1月時点、ATX版)。

購入先本体価格送料関税リスク合計目安
Sipeed公式$69$15-25あり約13,000-15,000円
AliExpress$89-109無料〜$10あり約14,000-18,000円
Amazon JP8,000-10,000円無料なし8,000-10,000円

Amazon JPは在庫が安定していれば最も手軽だが、価格変動が大きい。長期的に使う前提であれば、公式ストアからの購入が最安となる可能性が高い。


検討のポイント

NanoKVM Proが向いているケース

  • ホームラボで複数台のサーバーを管理している → BIOSアクセスの頻度が高い
  • IPMIを持たないマシンがある → 古いPCやワークステーションの管理に最適
  • 予算を$100以下に抑えたい → 競合製品の1/3〜1/4の価格
  • 4Kモニターを使用している → 唯一の4K対応IP-KVM
  • 将来のカスタマイズを想定 → オープンソースでファームウェア改変可能

他製品を検討すべきケース

  • エンタープライズ環境での利用 → PiKVM V4 Plus(成熟度・安定性重視)
  • 最低レイテンシが最優先 → JetKVM(30-60msで最速クラス)
  • 商用サポートが必要 → TinyPilot Voyager 3(有償サポート付き)
  • 中国製デバイスへの懸念がある → PiKVMまたはTinyPilot

購入前の確認事項

  1. マザーボードのUSB電源供給: S5(シャットダウン)状態でもUSB給電が維持されるか確認
  2. ATX電源制御の配線: 9ピンフロントパネルヘッダーへの接続が可能か確認
  3. ネットワーク環境: Tailscale/WireGuardでのリモートアクセス設定の可否
  4. 設置スペース: ATX版はPCIスロット、Desk版はデスクトップ設置

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