ブランドカラーの決め方 - 記憶に残る色を選ぶ戦略と実践
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ブランドカラーの決め方 - 記憶に残る色を選ぶ戦略と実践

企業・個人ブランドのカラー選定プロセスを解説。競合分析、色彩心理学の応用、カラーパレットの構築方法から、実際の運用ガイドラインまで。Tiffany BlueやCoca-Cola Redに学ぶ、ブランドを象徴する色の見つけ方。

ブランディングカラー戦略デザインマーケティングアイデンティティ

色はブランドの顔になる

ある調査によると、消費者の90%近くが、製品を購入する際に色を重要な要因として挙げています。

Tiffanyの箱を見れば、あのロビンエッグブルーが浮かぶ。Coca-Colaと聞けば、赤が脳裏をよぎる。スターバックスは緑、マクドナルドは黄色と赤——私たちは、ブランドを色で記憶しています。

ブランドカラーとは、単なる装飾ではありません。それは視覚的な約束です。

その色を見た瞬間、消費者はブランドの価値観、品質、世界観を思い出します。適切に選ばれたブランドカラーは、言葉よりも速く、深く、人の心に届きます。


なぜブランドカラーが重要なのか

認知度の向上

一貫したブランドカラーの使用は、ブランド認知度を最大80%向上させるという研究結果があります。

人間の脳は、テキストよりも色を先に処理します。ロゴの形状を忘れても、色は覚えている——そんな経験は誰にでもあるはずです。

差別化

競合がひしめく市場で、色は強力な差別化要因になります。

金融業界は信頼の青、食品業界は食欲の赤が多い中、あえて異なる色を選ぶことで記憶に残るブランドを作れます。T-Mobileがマゼンタを選んだのは、通信業界の青の海から抜け出すためでした。

感情的なつながり

色は感情を喚起します。

適切なブランドカラーは、ターゲット顧客との感情的なつながりを生み出し、ロイヤルティを高めます。


ブランドカラー選定の5ステップ

ステップ1:ブランドの核を定義する

色を選ぶ前に、ブランドそのものを深く理解する必要があります。

問いかけるべき質問:

質問目的
ブランドのミッションは?存在意義の明確化
ターゲット顧客は誰?共感を得る色の方向性
ブランドの性格は?色のトーン決定
競合との違いは?差別化ポイント
5年後のビジョンは?長期的な一貫性

ブランドを3つの形容詞で表すなら何か?「革新的」「信頼できる」「親しみやすい」——これらの言葉が、色選びの羅針盤になります。

ステップ2:色彩心理学を理解する

色には普遍的な心理効果があります。ただし、文化や個人差もあるため、絶対的なルールではありません。

一般的な連想適した業界例
情熱、エネルギー、緊急性食品、エンタメ、スポーツ
オレンジ活力、創造性、友好テック、クリエイティブ
黄色楽観、明快、注意子供向け、食品
自然、成長、健康環境、健康、金融
信頼、安定、専門性金融、テック、医療
高級、創造、神秘美容、高級品
ピンク優しさ、若さ、ロマンス美容、ファッション
洗練、高級、力強さ高級品、ファッション
純粋、シンプル、清潔医療、テック、ミニマル

ステップ3:競合を分析する

あなたの業界で、競合は何色を使っているか調査します。

競合カラーマップの作成:

  1. 主要競合5〜10社をリストアップ
  2. 各社のプライマリカラーを特定
  3. 色相環上にマッピング
  4. 「空いている」領域を見つける

青が多い業界であえて緑を選ぶ、赤が支配的な市場でオレンジを使う——競合分析は、差別化の機会を発見するプロセスです。

ただし、業界慣習を完全に無視するのはリスクがあります。金融で真っ赤なブランドカラーは、「信頼」よりも「警告」を連想させかねません。

ステップ4:カラーパレットを構築する

ブランドカラーは1色だけではありません。通常、階層的なパレットを構築します。

カラーパレットの構成:

種類役割使用頻度
プライマリカラーブランドの顔、最も重要な色60%
セカンダリカラープライマリを補完、バリエーション30%
アクセントカラーCTAボタン、強調要素10%
ニュートラル背景、テキスト必要に応じて

60-30-10ルールを意識すると、バランスの良い配色になります。

プライマリカラーの選び方

  • ブランドの核となる価値観を最も表現する色
  • 競合と差別化できる色
  • 様々な媒体で再現可能な色

セカンダリカラーの選び方

プライマリカラーとの関係で選びます:

関係効果
類似色調和、統一感青 + 青緑
補色コントラスト、ダイナミック青 + オレンジ
トライアドバランス、多様性青 + 赤 + 黄

当サイトのパレット生成ツールで、様々な配色パターンを試すことができます。

ステップ5:テストと検証

選んだ色を実際の使用環境でテストします。

チェックリスト:

  • デジタル(Web、アプリ)での見え方
  • 印刷物での再現性
  • 白背景・暗い背景両方での視認性
  • 小さいサイズ(ファビコン)での識別性
  • 色覚多様性への配慮
  • ターゲット顧客からのフィードバック
  • グローバル展開時の文化的意味

成功事例から学ぶ

Tiffany & Co.:色を商標にした先駆者

Tiffany Blueは、1837年から使用されている独自の色。正式にはPantone 1837(創業年にちなむ)として商標登録されています。

成功の要因:

  • 当時珍しかったロビンエッグブルーを選択
  • 150年以上一貫して使用
  • 箱の色だけでブランドを識別可能に

Spotify:緑で音楽業界を塗り替える

音楽サービスといえばApple Music(赤系)、Amazon Music(青系)が思い浮かぶ中、Spotifyは**鮮やかな緑(#1DB954)**を選択。

成功の要因:

  • 競合との明確な差別化
  • 「新鮮さ」「成長」のイメージ
  • ダークモードUIとの相性

Slack:遊び心のあるマルチカラー

ビジネスツールでありながら、Slackは4色の遊び心あるパレットを採用。

成功の要因:

  • 「仕事を楽しく」というミッションとの一致
  • 堅苦しいビジネスツールのイメージを打破
  • 各色に意味を持たせた体系的な設計

カラーコードの管理

ブランドカラーは、正確な色コードで定義・管理する必要があります。

必要な形式

形式用途
HEXWeb、デジタル#1DB954
RGBデジタル、ディスプレイrgb(29, 185, 84)
CMYK印刷物C:84 M:0 Y:82 K:0
Pantone印刷、製品PMS 354 C

当サイトのカラーコード変換ツールで、各形式間の変換が可能です。

カラーガイドラインの作成

ブランドカラーを定義したら、使用ガイドラインを文書化します。

含めるべき要素:

  1. カラーコード一覧(全形式)
  2. 使用比率(60-30-10ルールなど)
  3. 許容される組み合わせ
  4. 禁止事項(色の変更、透明度の変更など)
  5. アクセシビリティ要件(コントラスト比)
  6. 背景色との組み合わせ例

よくある失敗と回避策

失敗1:トレンドを追いすぎる

流行色をブランドカラーにすると、数年で古く感じる可能性があります。

回避策:トレンドはアクセントカラーで取り入れ、プライマリカラーは長期的視点で選ぶ。

失敗2:競合と同じ色を選ぶ

「信頼」を表現したいからと青を選んでも、競合と区別がつかなくなります。

回避策:競合分析を必ず行い、同じ色でも明度・彩度で差別化するか、別の色を検討する。

失敗3:媒体ごとに色がバラバラ

Webと印刷物で色が異なると、ブランドの一貫性が損なわれます。

回避策:カラーガイドラインを作成し、全媒体で正確な色コードを使用する。

失敗4:文化的な意味を無視

白は西洋では純粋さ、東アジアの一部では喪を連想させます。

回避策:グローバル展開を視野に入れるなら、ターゲット市場での色の意味を調査する。


個人ブランドの場合

フリーランサーやクリエイターの個人ブランドでも、カラー戦略は有効です。

ポイント

  1. 自分らしさを反映:好きな色、性格に合う色
  2. 業界との関係:完全に外れないが、個性も出す
  3. SNSでの一貫性:プロフィール画像、投稿デザイン
  4. シンプルに:企業ほど複雑なパレットは不要

個人ブランドでは、プライマリカラー1色と、ニュートラル(白、黒、グレー)があれば十分な場合も多いです。


まとめ:色は約束である

ブランドカラーを選ぶということは、顧客との視覚的な約束を交わすことです。

その色を見るたびに、顧客はあなたのブランドを思い出す。その期待に応え続けることで、色は単なる装飾から、信頼の象徴へと変わります。

正しいブランドカラーは、何年も、何十年も使い続けられるものです。だからこそ、慎重に、戦略的に選ぶ価値があります。


参考リソース

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