色が心を動かす仕組み — 配色の心理学入門
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色が心を動かす仕組み — 配色の心理学入門

なぜマクドナルドは赤×黄で、銀行は青なのか。色彩心理学の4つの影響要因(生物学的・文化的・個人的・文脈的)から、「赤ボタンが常に最適」という誤解まで。色の選択に偶然はない。ブランドが色に込めた戦略を、ハクアとイロハが対話形式で読み解く。

色彩心理学配色マーケティングデザインブランドカラー

マクドナルドはなぜ赤と黄色なのか。銀行はなぜ青ばかりなのか。

色の選択に偶然はない。それは色彩心理学に基づいた、人間の心理への精密な介入だ。


対話パート1: ファストフードが赤と黄色を選ぶ理由

昼休み。ハクアがコンビニから戻ってきた。

ハクア
ハクア

ねえ、さっき外出たんだけどさ。マクドナルドとKFCって、両方赤いじゃん。どっちも看板が赤。あれって、別に意識してないんだよね?なんとなく?

イロハ
イロハ

……なんとなくで、世界中の店舗の看板を赤にすると思う?

ハクア
ハクア

……まあ言われたら確かに。意図があるのか。

イロハ
イロハ

色彩心理学という分野があります。色が人間の感情・行動・認知に与える影響を研究する学問です。マクドナルドの赤は、その応用例。

ハクア
ハクア

赤ってどんな効果があるの?

イロハ
イロハ

赤は生理的な覚醒反応を引き起こします。心拍数が上がる。注意を引く力も最も強い。そして——食欲を増進させる。

ハクア
ハクア

食欲……。だからファストフードに多いのか。

イロハ
イロハ

飲食店に赤が多い理由がそこです。「今すぐ食べたい」という衝動を後押しする色。セールや割引表示に赤が使われるのも、緊急性を感じさせる効果があるから。

ハクア
ハクア

じゃあ黄色は?マクドナルドは赤と黄色のセットで使ってる。

イロハ
イロハ

黄色は幸福感と注意喚起。太陽や明るさの連想から、ポジティブな感情を呼びやすい。道路標識に黄色が使われる理由でもあります。赤の興奮と黄色の幸福感——その組み合わせが「楽しくてすぐ食べたい」という体験を作り出している。

ハクア
ハクア

なるほど。じゃあスタバは?あれは緑だよね。

イロハ
イロハ

スターバックスの緑は、戦略が逆です。赤が「今すぐ、興奮して」なら、緑は「ゆっくり、くつろいで」。緑は最も目に優しい色で、リラックス効果があります。自然、健康、安心の連想を呼ぶ。スタバが「カフェでゆっくり過ごす場所」として差別化しようとしたとき、緑は必然の選択だった。

ハクア
ハクア

ファストフードとカフェで、逆の色を使って、逆の体験を売ってるんだ。

イロハ
イロハ

そういうことです。


対話パート2: 銀行が青を選ぶ理由

ハクア
ハクア

次は銀行。みずほも三菱UFJも青いじゃん。なんで?

イロハ
イロハ

青は、世界で最も好まれる色です。複数の国際調査で一貫して1位。

ハクア
ハクア

それはわかった。でも「好き」と「信頼できる」は違うでしょ。

イロハ
イロハ

鋭い。青の効果は「好かれる」だけじゃない。最も「信頼できる」と感じさせる色でもあります。空や海の連想——広大で変わらない存在——から安心感が生まれる。金融や保険が「あなたのお金を守ります」と訴えるとき、その感情的裏付けを最も効率よく与えられる色が青なんです。

ハクア
ハクア

Facebook、Twitter、LinkedInも青だよね。

イロハ
イロハ

テクノロジー業界も青を好む傾向がある。「信頼できる技術」という印象を植えつけるのに適しているから。IBM も、Intel も、青。

ハクア
ハクア

じゃあ青を使えば全部うまくいくのでは。

イロハ
イロハ

——そう思いたくなりますが。

ハクア
ハクア

イロハ
イロハ

青は信頼感を与えますが、行動を促す力は弱い。「今すぐ購入」ボタンを青にしても、押したいとはあまり思わない。目的によって「適切な色」が変わるんです。

ハクア
ハクア

用途がある。色は万能じゃないんだ。


対話パート3: AppleはなぜシンプルなのかAppleが白と黒を使う理由

ハクア
ハクア

Appleはどう説明する?あそこ、白か黒しか使わないイメージ。

イロハ
イロハ

黒は高級感と権威の色です。歴史的にラグジュアリーブランドが使い続けてきた——シャネル、ナイキ。力強さ、専門性、洗練。そして白は清潔感とミニマリズム。余白の美、開放感。医療や衛生の象徴でもある。

ハクア
ハクア

黒が「高級」で、白が「清潔」……Appleはその二つを組み合わせてる?

イロハ
イロハ

「洗練されていて、清潔で、機能美がある」——Appleが作りたいイメージを、色が代弁している。製品の色だけじゃなく、広告、パッケージ、店舗空間まで一貫させることで、ブランドのイメージを統合している。

ハクア
ハクア

そういえば、ピンクって攻撃性を抑えるって聞いたことある。

イロハ
イロハ

1970年代にアメリカで行われた刑務所実験の話ですね。壁を特定のピンク——「ベイカーミラーピンク」に塗ったところ、囚人の攻撃性が短期間で低下したという記録があります。

ハクア
ハクア

本当に?

イロハ
イロハ

短期的な効果は観察されましたが、長期的な効果は確認されていない。この実験は「色が生理的反応を引き起こす可能性がある」という議論の出発点にはなっていますが、過信は禁物です。

ハクア
ハクア

色は思ったより深い。


対話パート4: 色の4つの影響要因と「文化の壁」

ハクア
ハクア

でも、赤って危険の色じゃないの?中国では赤が縁起いいって聞いたけど。

イロハ
イロハ

そこが重要な点です。色が心理に与える影響は、4つの要因が複雑に絡み合っています。

ハクア
ハクア

4つ?

イロハ
イロハ

ひとつめ、生物学的要因。赤は血や危険を連想させる——これは進化的な反応で、文化を超えて一定程度共通する。ふたつめ、文化的学習。「赤は危険」は西洋で広まった文化的な学習です。でも中国では赤は幸運と祝いの色——まったく逆の意味を持つ。

ハクア
ハクア

同じ色なのに、正反対の意味か。

イロハ
イロハ

みっつめ、個人的経験。特定の色と記憶が結びついている場合、その色への反応は個人ごとに大きく異なる。よっつめ、コンテキスト——文脈。同じ色でも、状況や周囲の色次第で意味が変わる。

ハクア
ハクア

白も確か……?

イロハ
イロハ

白は典型的な文化差の例です。西洋では純粋さ、結婚式のドレスの白。東アジアでは喪、弔いの色——日本でも葬儀に白が使われる場面がある。グローバルな展開をするブランドが、色の使い方に慎重になる理由がここにあります。

ハクア
ハクア

色は普遍的じゃないんだ。

イロハ
イロハ

普遍的な傾向はあります。でも「この色はこういう意味」と断言できるほど単純ではない。


対話パート5: 「赤ボタン最適説」という誤解

ハクア
ハクア

じゃあ「CTAボタンは赤にするとクリックされやすい」ってよく聞くけど、あれは?

イロハ
イロハ

HubSpotが行ったA/Bテストの話ですね。緑のCTAボタンと赤のCTAボタンを比べたら、赤が21%高いコンバージョンを示したという結果が広まった。

ハクア
ハクア

赤が正解ってこと?

イロハ
イロハ

……そのテスト、ページ全体が緑系のデザインだったんです。

ハクア
ハクア

あ、そうか。緑のページに赤が映えるから目立った——コントラスト効果か。

イロハ
イロハ

そのとおり。もしページが赤系だったら、赤いボタンは背景に溶け込んで逆効果になる。「赤いボタンは常に最適」ではなく、「ページの中で目立つ色が最適」という話。絶対的に良い色はない。コンテキスト次第

ハクア
ハクア

……じゃあ「青は信頼感があるから使いましょう」みたいな記事は?

イロハ
イロハ

傾向として正しい場合もありますが、文脈を無視した適用は危険です。青が信頼感を与えるのは、そのコンテキストで青が適切に機能するとき。別のコンテキストでは、青は退屈さや冷たさとして受け取られることもある。

ハクア
ハクア

「色の効果は魔法」じゃなくて、「文脈の言語」なのか。

イロハ
イロハ

……うまい表現ですね。色は意味を固定して持つのではなく、文脈の中で意味を作り出す。


実践: 色を選ぶ前に問うべきこと

色彩心理学を設計に活かすには、「この色はどんな効果があるか」より先に問うべきことがある。

目的と文脈から色を選ぶ

目的検討すべき色
信頼感を築きたい青、緑
行動を促したい赤、オレンジ(周囲との対比を確認)
高級感を出したい黒、紫、金
健康・自然を伝えたい緑、茶、ベージュ
清潔感を示したい白、ライトブルー

70-30-10の構成比

色の組み合わせには、バランスの基準がある。

  • 70%: ベースカラー——背景や大きな面積
  • 30%: セカンダリカラー——補助、サブ要素
  • 10%: アクセントカラー——CTAボタン、強調部分

アクセントを絞ることで、「見てほしい場所」に視線を誘導できる。

デザイン前のチェックリスト

□ ターゲット層の文化的背景を確認した
□ ブランドの価値観と色が一致している
□ 周囲の色とのコントラストを確認した
□ アクセシビリティ(色覚多様性)を考慮した
□ A/Bテストで実際の効果を検証する計画がある

まとめ: 色は「雰囲気」ではなく「設計」

ハクア
ハクア

整理すると、色は「なんとなく好き」じゃなくて、人間の反応に基づいた設計ツールなんだ。

イロハ
イロハ

そう。4つの要因——生物学的・文化的・個人的・文脈的——が複雑に絡んでいる。だから「この色は常に最適」という公式は存在しない。

ハクア
ハクア

コンテキストを読んで、目的を決めて、その上で色を選ぶ。

イロハ
イロハ

色の選択が先ではなく、「何を伝えたいか」「誰に向けているか」が先。色はその答えを伝えるための言語です。

ハクア
ハクア

……マクドナルドの設計者、ちゃんと考えてたんだな。

イロハ
イロハ

偶然が許されない世界に、偶然はないんです。


色彩心理学の面白さは、「知ると見え方が変わる」点にある。街の看板、Webサイトのボタン、商品パッケージ——すべてに意図がある。

当サイトのパレット生成ツールで、今日学んだ心理効果を意識した配色を試してみてほしい。


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