iDeCo(イデコ、個人型確定拠出年金)は、老後資金を準備するための私的年金制度である。2024年に新NISAが開始され、「どちらを優先すべきか」という疑問を持つ人が増えている。
本記事では、iDeCoの仕組み、新NISAとの違い、職業別の掛金上限、具体的な節税効果、金融機関の選び方まで、2026年時点の最新情報をもとに解説する。
⚠️ 投資に関するリスクについて
iDeCoは運用商品によって元本割れリスクがあります。投資信託を選択する場合、市場の変動により掛金を下回る可能性があります。また、60歳まで原則引き出しができません。加入は余裕資金で、自己責任において行ってください。
iDeCoとは?新NISAとの違い
iDeCoの基本的な仕組み
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で掛金を拠出し、運用商品を選んで運用する私的年金制度である。国民年金・厚生年金に上乗せする形で、老後資金を準備できる。
iDeCoの3つの特徴:
- 掛金は全額所得控除の対象(年末調整・確定申告で還付)
- 運用益は非課税
- 受取時も税制優遇あり(退職所得控除・公的年金等控除)
新NISAとの5つの違い
| 項目 | 新NISA | iDeCo |
|---|---|---|
| 主な目的 | 資産形成全般 | 老後資金(年金) |
| 引き出し | いつでも可能 | 原則60歳まで不可 |
| 投資上限 | 年360万円 | 月1.2〜6.8万円(職業により異なる) |
| 税制優遇 | 運用益非課税のみ | 掛金控除+運用益非課税+受取控除 |
| 対象年齢 | 18歳以上 | 20歳以上65歳未満 |
新NISAとの最大の違いは「流動性」と「節税効果」である。
- 新NISA: いつでも引き出せるが、掛金の所得控除なし
- iDeCo: 60歳まで引き出せないが、掛金全額が所得控除
iDeCoの3つの税制メリット
iDeCoの最大の魅力は、3段階の税制優遇である。
① 掛金全額所得控除(拠出時)
iDeCoの掛金は全額が所得控除の対象となる。年末調整または確定申告で申告すれば、所得税・住民税が軽減される。
年収別・掛金別の年間節税額(概算)
| 年収 | 所得税率 | 月2万円拠出 | 月5万円拠出 |
|---|---|---|---|
| 300万円 | 5% | 3.6万円 | 9.0万円 |
| 500万円 | 10% | 4.8万円 | 12.0万円 |
| 700万円 | 20% | 7.2万円 | 18.0万円 |
| 1000万円 | 23% | 7.9万円 | 19.7万円 |
※住民税10%を含む。概算値。
30年間の累計節税効果:
- 年収500万円・月2万円拠出: 144万円
- 年収700万円・月2万円拠出: 216万円
② 運用益非課税(運用時)
通常、投資信託の運用益には20.315%の税金がかかるが、iDeCoでは非課税である。
運用益非課税のインパクト:
月2万円を30年間、年利5%で運用した場合:
- 通常の課税口座: 元本720万円 → 運用後約1,330万円(税引後)
- iDeCo: 元本720万円 → 運用後約1,664万円
差額: 約334万円(非課税効果)
③ 受取時の控除(受取時)
iDeCoの受取方法は以下の3つ:
| 受取方法 | 適用される控除 | 特徴 |
|---|---|---|
| 一時金(一括) | 退職所得控除 | 勤続年数に応じた控除額 |
| 年金(分割) | 公的年金等控除 | 65歳以上なら年110万円まで非課税 |
| 併用 | 両方を組み合わせ | 最も有利になるよう調整可能 |
退職所得控除の計算:
- 加入20年以下: 40万円 × 加入年数
- 加入20年超: 800万円 + 70万円 × (加入年数 - 20年)
例: 30年加入の場合 → 800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円まで非課税
職業別の掛金上限と拠出戦略
iDeCoの掛金上限は職業・企業年金の有無により異なる。
掛金上限一覧
| 職業 | 月額上限 | 年額上限 |
|---|---|---|
| 自営業・フリーランス | 6.8万円 | 81.6万円 |
| 会社員(企業年金なし) | 2.3万円 | 27.6万円 |
| 会社員(企業型DCのみ) | 2.0万円 | 24.0万円 |
| 会社員(DBと企業型DC) | 1.2万円 | 14.4万円 |
| 公務員 | 1.2万円 | 14.4万円 |
| 専業主婦(夫) | 2.3万円 | 27.6万円 |
職業別の拠出戦略
1. 自営業・フリーランス(上限6.8万円)
- 厚生年金がないため、iDeCoを最大限活用すべき
- 国民年金基金と合わせて月6.8万円まで拠出可能
- 所得控除効果が大きいため、優先的に満額拠出を推奨
2. 会社員(企業年金なし、上限2.3万円)
- 新NISAと併用しやすい掛金上限
- 基本戦略: 新NISA年間120万円 + iDeCo年間27.6万円
3. 公務員(上限1.2万円)
- 共済年金があるため上限が低い
- 少額でも節税効果は大きい
- 掛金下限(月5,000円)から始めるのも有効
4. 専業主婦(夫)(上限2.3万円)
- 所得がないため所得控除のメリットなし
- 運用益非課税のみが利点
- 新NISAを優先すべき(流動性が高いため)
iDeCoのデメリット・注意点
iDeCoには強力な税制優遇がある一方、デメリットも存在する。
1. 60歳まで引き出せない
最大のデメリットは、原則60歳まで引き出せないことである。
- 住宅購入、教育費、急な出費に対応できない
- 病気・失業時も引き出し不可(掛金停止は可能)
対策:
- 生活防衛資金(生活費6ヶ月分)を確保した上で加入
- 新NISAと併用し、流動性を確保
2. 手数料がかかる
iDeCoには以下の手数料が発生する。
| 手数料 | 金額 | 支払先 |
|---|---|---|
| 加入時手数料 | 2,829円 | 国民年金基金連合会 |
| 口座管理手数料(月額) | 171円〜 | 国民年金基金連合会+事務委託先金融機関 |
| 運営管理手数料(月額) | 0円〜 | 金融機関(無料のところを選ぶ) |
| 給付手数料(受取時) | 440円/回 | 事務委託先金融機関 |
年間コスト最小例: 2,052円(月171円 × 12ヶ月)
手数料負けしないために:
- 運営管理手数料が無料の金融機関を選ぶ(SBI証券、楽天証券、マネックス証券等)
- 月5,000円以上の拠出を推奨(手数料率を下げる)
3. 受取時に課税される場合がある
退職所得控除・公的年金等控除を超える部分は課税される。
課税されやすいケース:
- 会社の退職金が多い(退職所得控除を使い切る)
- 公的年金が多い(公的年金等控除を超える)
対策:
- 退職金とiDeCoの受取タイミングをずらす
- 一時金と年金を併用し、控除枠を最大化
4. 元本割れリスク
投資信託で運用する場合、元本割れリスクがある。
対策:
- 定期預金・保険商品も選択可能(元本確保型)
- 長期運用でリスクを分散(30年なら短期変動の影響小)
iDeCoの始め方(口座開設〜運用開始)
ステップ1: 金融機関を選ぶ
選ぶ基準:
- 運営管理手数料が無料
- 低コストインデックスファンドが豊富
- スマホアプリが使いやすい
おすすめ金融機関(2026年時点):
| 金融機関 | 運営管理手数料 | 商品数 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| SBI証券 | 無料 | 37本 | 商品数最多、低コストファンド充実 |
| 楽天証券 | 無料 | 32本 | 楽天経済圏と連携、アプリ使いやすい |
| マネックス証券 | 無料 | 27本 | eMAXIS Slim全シリーズ対応 |
ステップ2: 必要書類を準備
共通の必要書類:
- 本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)
- 基礎年金番号(年金手帳、ねんきん定期便)
会社員の追加書類:
- 事業主証明書(勤務先に記入してもらう)
ステップ3: 運用商品を選ぶ
運用商品の種類:
| 商品タイプ | リスク | リターン | おすすめ度 |
|---|---|---|---|
| 国内株式インデックス | 中〜高 | 中〜高 | ★★★★☆ |
| 先進国株式インデックス | 中〜高 | 中〜高 | ★★★★★ |
| 全世界株式インデックス | 中〜高 | 中〜高 | ★★★★★ |
| バランスファンド | 中 | 中 | ★★★☆☆ |
| 定期預金 | 低 | 低 | ★★☆☆☆ |
運用商品選びのポイント:
- 信託報酬0.2%以下の低コストファンドを選ぶ
- 迷ったら「全世界株式インデックス」1本でOK
- 定期預金は節税目的のみ有効(運用益は期待できない)
ステップ4: 掛金額を決める
掛金の決め方:
- 生活防衛資金を確保(生活費6ヶ月分)
- 新NISAの拠出額を決める
- 残った余裕資金でiDeCo
掛金変更:
- 年1回まで変更可能
- 掛金停止(拠出を止める)も可能
編集部の分析
年収別・年齢別のiDeCo活用戦略
年収300万円台・20代:
- 新NISA優先、iDeCoは見送りも選択肢
- 流動性確保が重要(結婚、住宅購入等のライフイベント)
年収500万円台・30代:
- 新NISA年120万円 + iDeCo月1〜2万円の併用
- 節税効果は年間約5万円
年収700万円以上・40代:
- iDeCoを優先的に満額拠出
- 節税効果が大きい(年間7〜8万円以上)
- 新NISAと並行して老後資金を加速
自営業・フリーランス:
- 厚生年金がないため、iDeCo満額(月6.8万円)を推奨
- 年間約20〜30万円の節税効果
新NISA併用時の最適配分シミュレーション
ケース1: 年収500万円・30代会社員
- 月の投資余力: 5万円
- 最適配分: 新NISA 月3万円 + iDeCo 月2万円
- 年間節税: 約4.8万円
ケース2: 年収700万円・40代会社員
- 月の投資余力: 8万円
- 最適配分: iDeCo 月2.3万円(満額) + 新NISA 月5.7万円
- 年間節税: 約7.2万円
ケース3: 年収400万円・独身
- 月の投資余力: 3万円
- 最適配分: 新NISA 月3万円(iDeCo見送り)
- 理由: 流動性を優先、節税額も小さい
手数料コスト比較(主要金融機関)
月2万円・30年間運用時の手数料総額:
| 金融機関 | 運営管理手数料 | 30年間の総手数料 |
|---|---|---|
| SBI証券 | 0円 | 61,560円 |
| 楽天証券 | 0円 | 61,560円 |
| マネックス証券 | 0円 | 61,560円 |
| 地方銀行A | 月300円 | 169,560円 |
※国民年金基金連合会・事務委託先金融機関の手数料(月171円)は共通
運営管理手数料が有料の金融機関では、30年間で10万円以上の差が出る。
検討のポイント
iDeCoが向いている人
- ✅ 年収500万円以上で、所得税率が高い
- ✅ 生活防衛資金(生活費6ヶ月分)を確保済み
- ✅ 60歳まで引き出す予定がない余裕資金がある
- ✅ 老後資金を確実に準備したい
- ✅ 自営業・フリーランス(厚生年金がない)
iDeCoが向かない人
- ❌ 年収が低く、所得税を払っていない(所得控除の恩恵なし)
- ❌ 近い将来に住宅購入や教育費の支出予定がある
- ❌ 生活防衛資金が不足している
- ❌ 専業主婦(夫)で所得がない(運用益非課税のみ)
新NISAを優先すべきケース
- 20代で流動性を確保したい
- 年収300万円以下で節税効果が小さい
- 5年以内に大きな出費予定がある
- 投資初心者で、まず少額から始めたい
掛金額の決定基準
基本の考え方:
- 生活費(6ヶ月分)を貯蓄で確保
- 新NISAの年間投資額を決める(月1〜3万円)
- 残った余裕資金でiDeCo
掛金変更は年1回可能なので、少額から始めて徐々に増やす戦略も有効。
まとめ
iDeCoは、60歳まで引き出せない制約がある代わりに、強力な税制優遇が受けられる制度である。
iDeCoを活用すべき人:
- 年収500万円以上の会社員・公務員
- 自営業・フリーランス(厚生年金がないため特に重要)
- 生活防衛資金を確保し、老後資金を計画的に準備したい人
新NISAを優先すべき人:
- 20代で流動性を重視する人
- 年収が低く節税効果が小さい人
- 近い将来に住宅購入等の予定がある人
最適な戦略は「新NISA + iDeCo併用」。流動性と節税効果の両方を享受できる。
iDeCoは一度始めると60歳まで続く長期の制度である。金融機関選び、運用商品選び、掛金額設定を慎重に行い、老後資金を着実に準備していこう。
※ 本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品や投資戦略を推奨するものではありません。iDeCoへの加入は、ご自身の状況を踏まえ、自己責任で判断してください。