銀行口座に給料が入るたび、「とりあえず貯金」で終わる人は多い。でも、その「とりあえず」の奥には、毎年少しずつ目減りしている現実がある。ある夕方、イロハがハクアに投げかけた一言は、ずいぶん辛辣だった。
投資に関するご注意: 本記事は情報提供・教育目的のコンテンツです。特定の金融商品の購入を推奨するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。投資判断は、ご自身の責任において行ってください。
対話パート1: 眠るお金、動くお金
ある夕方。ハクアがエナドリのプルタブを開けながら、スマホの通知をぼんやり眺めていた。
ねえイロハ。証券口座とかって、結局何のためにあんの? 銀行においとくだけじゃダメなの?
あら、珍しい。ハクアちゃんが「お金」の話ですか。
いや、なんか口座開設のバナーがまたポップアップしてきて。ポイントもらえるっぽいんだけど、どうせ手数料で消えるんでしょ、って思って。
……ハクアちゃん、「眠るお金は死んでいる」という言葉を聞いたことはありますか?
は? なに急に。お金が死ぬってどういう意味。
銀行の普通預金金利、今いくらか知っています?
えーと……0.1%……くらい?
正確には大手行の普通預金で0.02〜0.1%あたりです。でも直近の物価上昇率は年2〜3%ある。実質的に、毎年1.9〜2.9%前後の「購買力」を失っているんです。
……あ。「増えてないのに、減ってる」ってこと?
そういうことです。お金を「眠らせているだけ」では、時間が敵になります。「寝かせながら働かせる」ことで、はじめて時間が味方になる。
(エナドリを一口飲む)……なんかそれ、サーバーのリソースを遊ばせてるのと同じ発想だな。
ふふ、その例えは……まあ正確ですね。
対話パート2: 複利は「バグ」じゃない、国の設計だ
じゃあ具体的にどうするの? いきなり株とか難しそうじゃん。
まず「複利」の仕組みを理解しましょう。ハクアちゃんが分かりやすい言語で説明しますね。
// 単利(銀行預金の発想)
profit = 元本 × 金利 × 年数
// 複利(投資信託の発想)
function compound(元本, 金利, 年数):
if 年数 == 0: return 元本
return compound(元本 × (1 + 金利), 金利, 年数 - 1)
単利は「増えた分は別口」。複利は「増えた分も元本に加えてもう一度運用する」——再帰的に増えていくんです。
あ……これ再帰関数じゃん。指数的な増え方をするやつだ。
そうです。100万円を年利5%で30年運用すると——
ちょっと待って計算する……432万円?
約432万円。元本の4倍以上。これが「時間を味方にする」ということです。
えっ待って。でも利益に税金かかるんじゃないの?
通常の課税口座では、約20.315%かかります。
20%……(暗算する)332万円分の利益なら、67万円くらい税金で消えるじゃん。
そこで「新NISA」の登場です。
……NISAってよく聞くやつ。
NISA口座内で発生した利益には、税金がかかりません。ゼロです。
ゼロ?! それ制度側のバグじゃん。
(少し笑いながら)バグじゃなくて、国が「老後のために自分で資産を作ってください」と設計した”コード”です。年間最大360万円、生涯で1,800万円まで、非課税で運用できます。
新NISAには2つの投資枠がある。どちらか一方だけでも、両方を組み合わせて使ってもよい。
| 枠 | 年間上限 | 主な投資対象 |
|---|---|---|
| つみたて投資枠 | 120万円 | 金融庁基準を満たす投資信託・ETF |
| 成長投資枠 | 240万円 | 上場株式・投資信託・REIT等 |
非課税期間は無期限。売却した分の枠は翌年以降に復活するため、生涯にわたって使い続けられる。
でも1,800万円とか積めないし……。
積める分だけでいいんです。月5,000円でも、月3万円でも。大事なのは「始めること」と「続けること」です。
自動積立ってできる?
できます。毎月決まった日に決まった額を、自動で買い付ける設定がほとんどの証券会社で可能です。
オートパイロット?
ふふ、そうですね。まさに。
対話パート3: 設定して、忘れる
なんか……「設定して忘れる」っていう発想、逆に好きかも。プログラムみたいで。
そこが「つみたて投資」の本質なんです。感情で売り買いしないこと——相場が下がったときに「もう終わりだ」と売ってしまうのが、最も損をするパターン。設定したら、あとは時間に任せる。
えーでも市場って読めなくない? 下がるときは下がるじゃん。
だから「毎月買い続ける」んです。高いときも安いときも定期的に買うことで、平均取得価格が平準化される——「ドルコスト平均法」と呼ばれる考え方です。
……それ、バッチ処理と同じ発想だな。大量データを一気に処理するんじゃなくて、少量ずつ分散させる。
(眼鏡をクイッと上げる)そのアナロジーは……なかなかですね。
(ちょっと得意そうに)でも最初どの商品を買えばいいの? 280本とか言ってたじゃん。
迷うなら「全世界株式インデックスファンド」から始めるのが王道です。一本で世界中の株に分散できる。信託報酬(運用コスト)が年0.1〜0.2%程度のものを選べば十分。
0.1%ってことは、100万円で1,000円か。安いな。
それが良いつみたて商品の条件の一つです。コストを低く抑えることで、複利の恩恵をフルに受けられる。
……思ったより仕組みはシンプルだな。
そうです。「難しそう」という先入観が、多くの人の「始め」を遅らせているんです。「お金を動かし続ける」より「寝かせ続ける」ほうが、精神的には難しい。でも、それが設計の妙なんですよ。
(エナドリを飲み干しながら)……ボクのお金、今ちょっと寝てるかも。
ふふ、起こしてあげなさい。
お金が「育つ眠り」に就くまで
お金の眠り方には、死んでいる眠りと、育っている眠りがある。銀行口座の0.1%金利はインフレに食われ続ける前者で、NISAを通じた長期積立は時間を味方に変える後者だ。
複利は再帰関数のように地味に、しかし確実に積み重なる。「設定して忘れる」オートパイロット設計は、感情的な判断を排除し、時間だけに仕事をさせる。その静かさが、最も賢い動き方かもしれない。
投資に関する重要事項: 投資信託は値動きのある有価証券等に投資しますので、基準価額は変動します。元本は保証されていません。投資は余裕資金で自己責任において行ってください。本記事は特定の金融商品の購入を勧誘するものではありません。