『エッセンシャル思考』グレッグ・マキューン - 「より少なく、しかしより良く」の技術
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『エッセンシャル思考』グレッグ・マキューン - 「より少なく、しかしより良く」の技術

99%の無駄を捨て、本当に大切な1%に集中する——グレッグ・マキューンが説く「より少なく、しかしより良く」の技術。忙しいのに成果が出ない人、あれもこれもと判断に迷う人へ。最少の時間で最大の成果を出すミニマリズム経営思考の核心を徹底レビュー。

書籍レビュー ミニマリズム 生産性 グレッグ・マキューン ビジネス書

この本について

『エッセンシャル思考』(原題: Essentialism: The Disciplined Pursuit of Less)は、シリコンバレーのコンサルティング会社THIS Inc.のCEOであるグレッグ・マキューンの代表作だ。Apple、Google、Facebook、Twitterなどのアドバイザーを務めてきた著者が、「より少なく、しかしより良く」(Less but better)という生き方を体系的に説いている。

2014年の原著発売以来、20カ国語以上に翻訳され、日本では累計50万部を超えるベストセラーとなった。

本書の問いはシンプルだ。「今、自分にとって本当に重要なことは何か?」。多くの人がすべてに手を出し、すべてを中途半端にしている現代において、この問いに正面から向き合う本は意外と少ない。


こんな人におすすめ

  • 毎日忙しいのに成果が出ない人 - 「何をやめるべきか」の判断基準が手に入る
  • 断れない性格の人 - 上手に「ノー」と言う技術が学べる
  • 仕事もプライベートもパンク気味の人 - 優先順位を見極めるフレームワークが得られる
  • 完璧主義で疲弊している人 - 「すべてをやらなくていい」という許可をもらえる
  • チームのリーダー - メンバーが本質的な仕事に集中できる環境の作り方がわかる

読みどころ

非エッセンシャル思考の罠

マキューンは、多くのビジネスパーソンが陥る罠を「非エッセンシャル思考」と名づける。

やらなくてはと考える。どれも大事だと考える。全部こなす方法を考える。

これに対し、エッセンシャル思考は:

やると決める。大事なことは少ないと知っている。何かを捨てる方法を考える。

違いは「考え方」だけではない。仕組みが違う。非エッセンシャル思考は「与えられたものすべてに反応する」受動的な生き方であり、エッセンシャル思考は「自分で選ぶ」能動的な生き方だ。

「選ぶ」力を取り戻す

本書で最も重要な概念は**「選択」**だ。

マキューンは言う——私たちは「選択肢」を持っているのではなく、「選ぶ力」を持っている。この2つは決定的に違う。選択肢は外から与えられるが、選ぶ力は自分のものだ。

しかし多くの人は、忙しさのなかで「選ぶ力」を手放している。上司に頼まれたから。同僚に誘われたから。断ると悪いから。こうして、自分の人生の舵を他人に委ねてしまう

エッセンシャル思考の第一歩は、この「選ぶ力」を意識的に取り戻すことだ。

90点ルール

優先順位を決めるための具体的な基準として、マキューンは90点ルールを提案する。

ある選択肢を評価するとき、100点満点で点数をつけてみる。90点未満なら、それは0点と同じとして切り捨てる。

「まあまあ良い」はノー。「かなり良い」もノー。「絶対にイエス」でなければ、それはノーだ。

このルールは厳しく感じるかもしれない。しかしマキューンが指摘するように、「まあまあ良い」選択肢を受け入れ続けた結果が、今の「忙しいのに成果が出ない」状態なのだ。

トレードオフを直視する

エッセンシャル思考のもう一つの核心は、トレードオフの受容だ。

何かに「イエス」と言うことは、必ず別の何かに「ノー」と言うことを意味する。この現実を直視せず、「全部やれる」と思い込むのが非エッセンシャル思考の典型だ。

マキューンは、戦略コンサルタントとしてのキャリアで数多くの企業を見てきた。成功する企業は例外なく**「何をやらないか」**を明確にしている。逆に、あれもこれもと手を広げた企業は、やがて中途半端になり、どの市場でも勝てなくなる。

これは個人の人生でも同じだ。


実践への活用

ステップ1:現在の「やること」を書き出す

まず、今抱えているタスク、プロジェクト、約束、習慣をすべて書き出す。仕事もプライベートも含めて、漏れなくリスト化する。

ステップ2:90点ルールで仕分ける

各項目に100点満点で点数をつける。90点未満は「やめる候補」だ。最初は抵抗があるかもしれないが、リストの半分以上が90点未満なら、それが「忙しいのに成果が出ない」原因そのものだ。

ステップ3:「上手なノー」を練習する

断り方のテンプレートを用意しておく。

  • 「今は○○に集中しているので、今回は見送らせてください」
  • 「スケジュール的に難しいです。次の機会にぜひ」
  • 「代わりに△△さんが適任かもしれません」

即答を避け、「確認して折り返します」と一度持ち帰るのも有効だ。その場のプレッシャーで安易にイエスと言わないための防波堤になる。

ステップ4:バッファを設計する

マキューンは、予定にバッファ(余白)を組み込むことを強く推奨している。予定の120%ではなく80%で設計する。残りの20%が、不測の事態への備えと、本質的なことを考える時間になる。


関連書籍

  • 『人を動かす』D・カーネギー - 人間関係の原則を説いた古典
  • 『7つの習慣』スティーブン・R・コヴィー - 「重要だが緊急でないこと」に集中する思考法
  • 『ファスト&スロー』ダニエル・カーネマン - 意思決定のバイアスを知る
  • 『SINGLE TASK 一点集中術』デボラ・ザック - マルチタスクの害と一点集中の力
  • 『限りある時間の使い方』オリバー・バークマン - 時間管理の根本的な発想転換

まとめ

『エッセンシャル思考』は、時間管理やタスク管理のテクニック本ではない。「何に自分の有限な時間を使うか」という、人生の根本的な問いに答える本だ。

「より少なく、しかしより良く」——このシンプルな原則を実践するのは、言うほど簡単ではない。社会は「もっとやれ」「もっと稼げ」「もっと成長しろ」と叫び続けている。

しかしマキューンが示すように、すべてに手を出す人生は、結局何も成し遂げられない人生になりかねない。99%を捨てる勇気を持ち、残りの1%に全力を注ぐ。その1%こそが、自分にとって本当に大切なことなのだ。

忙しさに疲れた人、成果が出ない焦りを感じている人にこそ、一度立ち止まって読んでほしい一冊だ。


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紹介書籍

エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする
エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする

グレッグ・マキューン

Apple、Google、Facebook、Twitterのアドバイザーを務めた著者が説く「より少なく、しかしより良く」の生き方。20カ国語に翻訳された世界的ベストセラー。