この本について
『ChatGPTを使い尽くす! 深津式プロンプト読本』は、note株式会社CXOの深津貴之と、テクニカルライター岩元直久の共著による、ChatGPTプロンプト設計の実践書だ。
「深津式プロンプト」とは、深津がnoteや各種メディアで提唱してきた、AIへの指示を構造化するフレームワークのこと。役割(ロール)を与え、制約条件を明示し、出力形式を指定する——このシンプルな3要素が、AIの出力品質を劇的に変えることを、本書はビジネスシナリオを通じて実証している。
2024年8月の発売以来、プロンプトエンジニアリング入門書として広く読まれている。
本書の価値は、**「AIは道具だが、使い方を知らなければ鈍器と同じ」**という認識にある。ChatGPTを「なんとなく」使っている人と、構造化されたプロンプトで使いこなす人では、得られる成果に天と地ほどの差がつく。その差を埋めるのが本書だ。
こんな人におすすめ
- ChatGPTを使っているが、出力がいまいちな人 — プロンプトの「型」を知るだけで出力が変わる
- AIを業務に導入したい企業の担当者 — 具体的なビジネスシナリオですぐに応用できる
- プロンプトの書き方を体系的に学びたい人 — 感覚的な使い方から脱却できる
- エンジニアでないがAIを活用したい人 — 技術知識不要、日本語で理解できるフレームワーク
- AI関連の書籍を探しているが、何から読むべきかわからない人 — 最初の一冊として最適
読みどころ
深津式プロンプトの3要素
本書の核心は、プロンプトを3つの要素に分解して構造化するアプローチだ。
1. 役割(ロール)の設定
「あなたはプロのマーケターです」「あなたは10年経験のある編集者です」——AIに役割を与えることで、回答の視座と専門性が変わる。
深津はこれを「AIに名刺を渡す」と表現している。名刺なしで「何か提案して」と言われても困るように、AIも自分の立場がわからなければ適切な回答ができない。
2. 制約条件の明示
「200字以内で」「箇条書きで3つ」「初心者にもわかるように」——制約を与えることで、出力の品質と一貫性が向上する。
制約がないプロンプトは「自由に描いて」と白紙を渡すようなもの。自由すぎると、かえって焦点がぼやける。制約は創造性の敵ではなく、味方なのだ。
3. 出力形式の指定
「表形式で」「JSON形式で」「メリット・デメリットに分けて」——出力の形式を指定することで、後工程での利用しやすさが格段に上がる。
この3要素を組み合わせた基本テンプレートが「深津式プロンプト」だ。
「5W1H」のAI応用
深津は、プロンプト設計をジャーナリズムの基本である5W1Hに重ねている。
- Who — 誰として回答するか(ロール設定)
- What — 何を出力するか(タスク定義)
- Why — なぜそれが必要か(目的の共有)
- When/Where — どんな状況で使うか(コンテキスト)
- How — どのような形式で(出力指定)
「プロンプトエンジニアリング」という用語はプログラマー向けに聞こえるが、本質は**「良い質問をする技術」**であり、記者が取材で使う5W1Hと同じだと深津は指摘する。
「AIの失敗」を設計に組み込む
本書で特に実践的なのは、AIの失敗パターンを予測してプロンプトに対策を組み込むという発想だ。
AIは幻覚(ハルシネーション)を起こす。事実と異なる情報を自信満々に述べることがある。深津はこれを「AIの仕様」として受け入れたうえで、プロンプト側で対策する方法を示す。
- 「わからない場合は『わかりません』と答えてください」
- 「情報源を明記してください」
- 「確信度を5段階で示してください」
AIの弱点を知り、プロンプトで補う——この姿勢こそが、AIを「なんとなく使う人」と「使いこなす人」を分ける境界線だ。
実践への活用
ステップ1:テンプレートを暗記する
まず深津式の基本テンプレートを覚える。「あなたは[ロール]です。[制約条件]に従って、[タスク]を[出力形式]で出力してください」。このテンプレートだけで、出力品質は大幅に改善する。
ステップ2:自分の業務で3回試す
テンプレートを使って、自分の日常業務で3つのプロンプトを書いてみる。メールの下書き、会議の議事録要約、企画書のアウトライン——何でもいい。3回試せば、テンプレートの効果を体感できる。
ステップ3:失敗を分析する
期待と異なる出力が返ってきたとき、プロンプトのどこが曖昧だったかを分析する。ロールが不適切だったのか、制約が不足していたのか、出力形式が指定されていなかったのか。失敗の分析こそが、プロンプト力を最も伸ばす。
ステップ4:チームでテンプレートを共有する
個人のプロンプトをチームで共有し、組織のナレッジにする。「この業務にはこのプロンプトが最適」というテンプレート集ができれば、チーム全体のAI活用レベルが底上げされる。
関連書籍
- 『ChatGPTの頭の中』 スティーヴン・ウルフラム — LLMの仕組みを直感的に理解
- 『プロンプトエンジニアリング入門』 我妻幸長 — より技術的なプロンプト設計
- 『AI時代の質問力』 石角友愛 — ビジネスにおけるAIへの問い方
- 『エッセンシャル思考』 グレッグ・マキューン — 制約を味方にする思考法
- 『リーダブルコード』 Dustin Boswell — 読みやすいコードの原則(プロンプトにも通じる)
まとめ
『深津式プロンプト読本』は、AIへの「問い方」を体系化した本だ。
本書を読んで気づくのは、良いプロンプトの条件と、良いコミュニケーションの条件が驚くほど似ているということだ。相手の立場を定義し、制約を明示し、期待する出力を伝える——これは人間同士の仕事の依頼でも、まったく同じことが言える。
AIとのコミュニケーションは、人間とのコミュニケーションの鏡だ。曖昧な指示からは曖昧な結果しか返ってこない。この原則を理解すれば、プロンプト力だけでなく、仕事のコミュニケーション力そのものが向上する。
AI時代に最も価値がある能力は、コードを書くことでもデータを分析することでもない。「良い問いを立てる力」——深津式プロンプトが教えてくれるのは、その本質だ。