この本について
シムレーシングで速くなるために、多くのプレイヤーは機材に投資する。DD(ダイレクトドライブ)ハンコン、ロードセルペダル、トリプルモニター——確かに機材は重要だ。
しかし、同じ機材を使っていてもタイムに数秒の差がつく。その差を生むのは、物理法則の理解と操作の正確さだ。リアルのレーシングドライバーが体で覚えてきた知識は、シムレーシングにもそのまま応用できる。
本記事では、シムレーサーのタイム短縮に直結する一冊を紹介する。
『ドライヴィング・メカニズム』黒澤元治
概要
元F3000ドライバー・黒澤元治が、車の「動く仕組み」を物理学の観点から解説した一冊。
黒澤元治は1970年代にフォーミュラカーで活躍し、引退後はドライビングインストラクターとして活動。「ガンさん」の愛称で親しまれ、ベストモータリングの走行インプレッションでも知られる。
読みどころ
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タイヤグリップの限界円: 前後方向(加速/減速)と左右方向(旋回)のグリップは独立ではなく、円の中で配分される。この「グリップサークル」の概念を理解すると、「なぜブレーキを残しながらターンインするのか」が論理的にわかる
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荷重移動の物理学: ブレーキを踏むと前輪に荷重が移る。この移動量はサスペンションのセッティングで変わる。シムレーシングでも車両セットアップの「フロント/リア荷重バランス」に直接関わる知識だ
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FFBが伝えるもの: ステアリングのフォースフィードバック(FFB)は何を伝えているのか。路面状況、タイヤのスリップアングル、セルフアライニングトルク——FFBの「言語」を読めるようになると、限界走行がスムーズになる
シムレーシングへの応用
iRacingやAssetto Corsaのセットアップ画面で「キャスター角」「トレール」「アンチロールバー」の数値を変えるとき、本書の知識があると何が変わるか予測できる。感覚的な試行錯誤から、理論に基づいたセッティングに移行できる。
関連書籍
- 『Go Like Hell — フォードvsフェラーリ』 - モータースポーツの歴史を知るノンフィクション
- 『ドライビングの科学』Paul F. Engeler - より学術的な車両力学の解説
- 『超一流になるのは才能か努力か?』アンダース・エリクソン - 「意図的な練習」の理論はシムレーシングの練習法にも応用できる
まとめ
シムレーシングは「ゲーム」であると同時に「シミュレーション」だ。つまり、リアルのドライビング理論がそのまま通用する。
ハンコンの購入費用5-20万円に対して、ドライビング理論書は数千円。投資対効果としては、機材のアップグレードよりも読書のほうが高いかもしれない。
DDハンコンのFFBが伝えてくる情報の「読み方」を知ること。コーナーの手前で何が起きているかを物理的に理解すること。これらは本から学べる。