「どうせどれも一緒でしょ」と言いながらリモコンをいじるハクアと、眼鏡を上げながら静かに首を振るイロハ。動画配信サービスを「料金」だけで選ぶことの、ある意味での「野暮さ」について、二人の見解は大きく分かれた。
対話パート1: 「全部同じ」問題
深夜、ハクアがソファに転がりながらスマホでスクロールしていた。
ねえイロハ。動画配信って結局どれ入ればいいの? NetflixとプライムビデオとDisney+と……なんか全部あるじゃん。
貴方は今、どんなコンテンツを見たいんですか?
んー、アニメとか、たまにゲームの実況とか。あとは気が向いたら映画。
では、「推し」はいますか?
推し? えっと……シムレーシング系のYouTuberとか、あと去年ハマったアニメのシーズン2が待ち遠しくて。
その「推しコンテンツ」が、どのサービスにいるか——それが出発点なんです。
いや、でも結局どこも同じようなラインナップじゃない? 安いほうで良くない?
……ハクアちゃん、貴方は本当に「野暮」ですね。
また野暮か! なんで?
月600円と2,189円では3.6倍の差があります。それが「同じ」に見えるとすれば、貴方はコンテンツに何も期待していないということになる。
(むっとしながら)それは言い方が……まあ、でも機能は似てるでしょ。
機能は似ていても、「世界観」は全く違います。
対話パート2: 4つの世界の哲学
一つずつ解説しましょう。まず、Netflixから。
Netflix、知ってる。イカゲームとか。
そうです。Netflixの本質は「グローバル物語の帝国」です。世界196カ国でオリジナルコンテンツを製作・独占配信する。韓国ドラマ、スペインドラマ、日本アニメ——地域の物語を世界規模で届けるプラットフォームです。
| サービス | 月額 | コンセプト |
|---|---|---|
| Netflix | 790〜1,980円 | グローバル物語の帝国 |
| Amazon Prime Video | 600円 | 生活に溶け込む動画インフラ |
| Disney+ | 990〜1,320円 | フランチャイズの巡礼地 |
| U-NEXT | 2,189円(実質989円) | 日本エンタメの百科事典 |
実質989円ってどういう意味?
U-NEXTは毎月1,200ポイントが付与されます。これを新作レンタルや漫画購入に使えば、実質の負担は989円になる。作品数は32万本以上と国内最大級です。
32万って……どんな規模なの。
Netflixの推定5,000本、プライムビデオの推定10,000本と比べると、桁が違います。ただし「量」が全てではない。Netflixはオリジナル作品の「質」に投資しています。
じゃあプライムビデオは?
Amazon Prime Videoは「生活インフラ化した動画」です。月600円はプライム会員費の一部——送料無料、Prime Music、Prime Readingも含まれる。動画単体ではなく、Amazonとの「関係性」の中にある。
……確かに、Prime会員してるならビデオは「おまけ」みたいな感覚か。
そうです。Disney+はさらに明確です。「フランチャイズの巡礼地」——ディズニー、ピクサー、マーベル、スターウォーズ。このどれかに信仰がある人のための場所です。
宗教みたい。
ふふ、ある種そうですね。MCUを全作追うなら Disney+なしでは語れない。逆に言えば、そのどれにも関心がなければ契約する意味がほとんどない。
潔い設計だな……。
対話パート3: 「推し」が答えを出す
えーと、整理すると。
- Netflix = 高品質オリジナル狙いの人
- プライム = とりあえず安く、Amazonユーザー
- Disney+ = MCU・スターウォーズ民
- U-NEXT = 作品数重視、新作映画早めに見たい
概ね正しいです。それで、ハクアちゃんの「推し」はどこにいますか?
(少し考える)……アニメって、どこが強いの?
日本アニメの網羅性ならU-NEXTが優秀です。Netflixも独占配信アニメが増えていますが、旧作の充実度ではU-NEXTに軍配が上がります。新作映画も早い。
(さらに考える)……去年ハマったやつのシーズン2、もしかしてU-NEXTで来るかも。
貴方が追っているタイトルをまず調べてみなさい。どのサービスで配信されているかが分かれば、答えは出ます。
……なんか急に現実的になった。
「どれがいい?」という問いは、本当は「自分の推しはどこにいるか?」という問いなんです。スペックで選ぶのは二番目。
(スマホで調べながら)あ、マジだ。シーズン2、U-NEXTで独占配信になってる。
ふふ、素直でよろしい。
(むすっとしながら)……U-NEXTにします。
「世界」を選ぶ、という視点
動画配信サービスを料金表で比べることは間違っていない。ただ、その手前に「自分がどの世界に帰属したいか」という問いがある。
Netflixはグローバルの物語を届け、PrimeはAmazonという巨大エコシステムの入口であり、Disney+はフランチャイズ愛に応え、U-NEXTは日本エンタメの広さで待ち受ける。どれが「正解」かは、推しの居場所によって決まる。