Claude Codeのインストール方法や基本コマンドは、すでに多くのガイドが存在する。本記事では、Astroベースの静的サイト(月間170記事超)をClaude Codeで実際に運用する中で得た設計パターンと運用ノウハウに焦点を当てる。
この記事の前提: Claude Codeの基本操作を理解していることを前提とする。インストールから始めたい場合はClaude Code完全ガイドを、ショートカットやコマンドを知りたい場合はClaude Code実践Tips集を先に参照されたい。
CLAUDE.mdは「組織の記憶」として設計する
CLAUDE.mdはプロジェクトの説明書ではない。AIエージェントが自律的に判断するための意思決定フレームワークである。「何を書くか」以上に「何を書かないか」が重要になる。
設計原則:3層構造
実運用で効果的だったのは、CLAUDE.mdを以下の3層に分ける構造である。
| 層 | 配置 | 内容 | 読み込み |
|---|---|---|---|
| グローバル | ~/.claude/CLAUDE.md | 全プロジェクト共通の行動規範 | 常時 |
| プロジェクト | CLAUDE.md(ルート) | アーキテクチャ、ビルドコマンド、運営方針 | 常時 |
| ワークスペース | 1_article-writing/.claude/CLAUDE.md | 用途別のコマンド・エージェント定義 | 該当WS内のみ |
注意点: CLAUDE.mdは最初の200行のみが自動ロードされる。200行を超える場合は、コアな指示を上部に配置し、詳細はdocs/や.claude/rules/に分離してリンクする。
「やらないこと」リストの威力
CLAUDE.mdに最も効果があったのは、禁止事項の明示である。AIエージェントは「良かれと思って」不要な変更を行うことがある。以下のような記述が無駄な修正を防ぐ。
## やらないこと
- 新セクションの追加
- URL体系やルーティングの変更
- 技術スタックの変更(Astro/React/Tailwind)
「やること」だけを書いた場合、AIは記述されていない領域を自由に解釈する。「やらないこと」を明示することで、行動の境界が定まり、意図しない変更が激減した。
.claude/rules/による関心の分離
CLAUDE.mdが肥大化すると、すべての指示が常時読み込まれてコンテキストを圧迫する。.claude/rules/ディレクトリにルールファイルを分離すれば、パスベースで条件付き読み込みが可能になる。
.claude/rules/
├── architecture.md # 依存関係ルール(全ファイル対象)
├── deployment.md # デプロイ手順(CI/CD変更時のみ)
├── image-policy.md # 画像使用方針(記事・画像変更時のみ)
└── mcp.md # MCP設定ガイド
各ファイルの先頭でpaths:を指定すると、該当パスのファイルを操作する場合にのみルールが読み込まれる。170記事分の画像ポリシーを常時ロードする必要はない。
カスタムコマンドでパイプラインを構築する
Claude Codeの.claude/commands/にMarkdownファイルを配置すると、スラッシュコマンドとして呼び出せる。これを応用して、記事制作の全工程を自動化するパイプラインを構築した。
/pipelineコマンドの設計
/pipeline [slug] # 指定記事を執筆
/pipeline --auto # 完全自律モード
/pipeline --batch # 複数記事を連続実行
パイプラインの処理フローは以下の8ステップで構成される。
| Step | 処理 | 自動化レベル |
|---|---|---|
| 0 | 企画選定(backlog.yamlから優先度順に選択) | 完全自動 |
| 1 | 執筆タイプ判定(standard / dialogue / book-review) | 完全自動 |
| 2 | 執筆(researcher → writer → editor の3エージェント) | 半自動 |
| 3 | 品質ゲート(lint + スコアリング) | 完全自動 |
| 4 | バックログ更新 | 完全自動 |
| 5 | サムネイル生成(Replicate API経由) | 完全自動 |
| 6 | SEO最適化(メタデータ検証 + 内部リンク強化) | 完全自動 |
| 7 | ビルド検証 + デプロイ(GitHub Actions) | 完全自動 |
設計のポイント: 各ステップは独立しており、途中で失敗しても前ステップの成果物は保存済みである。Step 3の品質ゲートで不合格になっても記事ファイルは残り、手動修正後に再実行できる。
コマンドファイルの構造
コマンドファイルは単なるプロンプトテンプレートではなく、判断ロジックを含む設計書として記述する。
## Step 3: 品質ゲート
### 判定ロジック
- lint合格 + score 70点以上 → Step 4へ
- lint不合格 → 自動修正して再保存、再lint
- score 70点未満 → /improve-article で改善試行(最大2回)
- 2回改善しても70点未満 → ユーザーに報告
AIエージェントはこのロジックに従って自律的に判断し、人間の介入なしにパイプライン全体を完走できる。
Hooksで品質ゲートを自動化する
Hooksは、ツール実行の前後にシェルコマンドを挿入する仕組みである。.claude/settings.jsonに定義する。
実運用で効果的なHooks
| タイミング | Hook | 目的 |
|---|---|---|
| PostToolUse(Edit) | prettier --write | 編集後にコードを自動フォーマット |
| PostToolUse(Edit) | console.log検出 | デバッグ用ログの残存を警告 |
| PreToolUse(Write) | .md作成ブロッカー | 不要なドキュメントファイルの生成を防止 |
| PreToolUse(Bash:git push) | ビルド検証チェック | .build-verifiedファイルの存在を確認 |
| Stop | console.logの全ファイル監査 | セッション終了時に変更ファイル全体をチェック |
Push前のビルド検証は特に重要である。pre-pushフックで.build-verifiedファイルの存在を確認し、ビルド未実行のままプッシュすることを防いでいる。Claude Codeはビルド成功後に自動でtouch .build-verifiedを実行するため、人間が手動で確認する必要はない。
Hooksの設計指針
Hooksは「警告」と「ブロック」の2段階で設計する。
- 警告(exit 0): 情報を表示するが処理は続行する(例: console.log検出)
- ブロック(exit 2): 処理を中断する(例: 未ビルドでのpush防止)
ブロックHooksを多用するとワークフローが止まりやすくなる。本当に防ぐべきミスに限定し、それ以外は警告に留めるのが実用的である。
MCPサーバーで外部連携を構築する
MCP(Model Context Protocol)を使えば、Claude Codeから外部ツールやデータソースに接続できる。
実運用で使用しているMCPサーバー
| サーバー | 用途 | 活用例 |
|---|---|---|
filesystem | ファイル操作 | 記事一覧取得、画像ディレクトリ探索 |
memory | 知識永続化 | セッション間での学習事項の引き継ぎ |
sequential-thinking | 段階的推論 | 複雑なリファクタリングの計画 |
playwright | ブラウザ操作 | デプロイ後のスクリーンショット取得、コントラスト検証 |
tavily | Web検索 | 記事執筆時の最新情報調査 |
MCPの設計上の注意点
MCPツールの説明文はコンテキストウィンドウを消費する。多数のMCPサーバーを接続すると、ツール説明だけでコンテキストの10%以上を占有するケースがある。Claude CodeのTool Search機能(Sonnet 4以降対応)を活用し、必要なツールだけを動的にロードする設計が推奨される。
また、MCPサーバーのスキーマがoneOf/allOf/anyOfを含む場合、Claude Codeとの互換性問題が発生することがある。接続前にスキーマの互換性を確認し、問題がある場合はBash経由でAPIを直接呼び出す方が安定する。
マルチエージェント構成の実践
Claude CodeのTaskツールを使えば、特定の役割を持つサブエージェントを並列実行できる。
記事制作の3エージェント構成
[researcher] → [writer] → [editor]
調査 執筆 推敲
(sonnet) (sonnet) (sonnet)
| エージェント | モデル | 役割 | コンテキスト消費 |
|---|---|---|---|
| researcher | Sonnet | Web検索・既存記事分析・競合調査 | 15-20% |
| writer | Sonnet | 骨格設計 + 本文執筆 | 25-35% |
| editor | Sonnet | 推敲・品質チェック・SEO調整 | 10-15% |
設計のポイント: 各エージェントは独立したコンテキストウィンドウで動作するため、メインの会話コンテキストを圧迫しない。researcherが収集した情報は返り値としてメインに戻り、writerへの入力となる。
モデル選択の使い分け
| モデル | 用途 | コスト目安 |
|---|---|---|
| Opus 4.6 | 複雑なアーキテクチャ判断、大規模リファクタリング | 高(入力$5/M + 出力$25/M) |
| Sonnet 4.5 | 日常の開発・記事執筆・コードレビュー | 中(入力$3/M + 出力$15/M) |
| Haiku 4.5 | 軽量タスク(lint、フォーマット、簡単な検索) | 低(Sonnetの約1/3) |
日常の記事制作にはSonnetで十分であり、Opusは「設計判断を間違えると手戻りが大きい」場面に限定するのが費用対効果として合理的である。月間のAPI利用コストは、Sonnet中心の運用で**$50〜80程度**に収まっている。
コンテキスト管理の実践戦略
Claude Codeのコンテキストウィンドウは有限であり、長時間の作業ではコンパクション(自動要約)が発生する。コンパクション時に重要な情報が失われると、同じ作業の繰り返しやミスの原因となる。
Auto Memoryの活用
Claude Codeは~/.claude/projects/<project>/memory/MEMORY.mdにプロジェクト固有の記憶を自動保存する。セッション間で以下の情報を引き継げる。
- プロジェクト構造とアーキテクチャの要点
- 過去の作業で発見したGotchas(落とし穴)
- ビルドコマンドとデプロイ手順
- 命名規則やコーディングパターン
運用のコツ: MEMORY.mdも200行制限があるため、詳細なトピック別ファイル(debugging.md、patterns.md等)を作成し、MEMORY.mdからリンクする構成が効果的である。
コンパクションへの備え
Claude Codeはコンテキストの75%に達した時点でコンパクションを発動する。以下の対策で情報損失を最小化できる。
- 重要な決定事項はファイルに書き出す — コンテキスト内の発言は消えるが、ファイルは残る
- TodoWriteツールで進捗を追跡する — コンパクション後もTODOリストは保持される
/compactで手動コンパクションを実行する — 保存すべき情報を指定できる- 1タスク完了ごとにコミットする — Git履歴が最も信頼できる「記憶」である
よくある質問
Claude Codeは個人開発者にも必要か?
プロジェクトの規模と複雑さによる。 単一ファイルのスクリプトなら不要だが、10ファイル以上のプロジェクトでは、CLAUDE.mdによるコンテキスト提供だけで生産性が大幅に向上する。インストールは無料であり、APIコストも小規模なら月$10〜20程度に収まる。
CursorとClaude Codeはどちらを選ぶべきか?
併用が最も効率的である。 Cursorはリアルタイムのコード補完とインタラクティブな編集に優れ、Claude Codeは自律的なマルチステップタスク(リファクタリング、テスト生成、ドキュメント作成)に強い。両者の詳細な比較はCursor vs Claude Code徹底比較を参照されたい。
CLAUDE.mdが長くなりすぎた場合はどうするか?
200行以内に収めるのが鉄則である。 200行を超えた部分は自動ロードされない。超過する場合は.claude/rules/にルールファイルを分離し、CLAUDE.mdにはプロジェクトの概要・ビルドコマンド・運営方針のコアだけを残す。
API利用コストを抑えるには?
モデル選択とサブエージェントの活用が鍵である。 日常の開発はSonnet、軽量タスクにはHaikuを使い分ける。サブエージェントを活用すれば、メインコンテキストの圧迫を防ぎつつ並列作業が可能になる。Batch APIを使えば非同期処理で50%のコスト削減も可能である。
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※ 本記事は2026年2月時点の情報に基づく。Claude Codeの機能・料金は頻繁に更新されるため、最新情報は公式ドキュメントを確認されたい。